健康経営優良法人の認定のあと、何をする?福利厚生から「投資」に変える進め方

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認定の通知が届いて、ロゴを採用ページに載せた。社内報でも報告した。

その翌月、ジム補助の利用申請の一覧を見ると、並んでいるのは去年とほとんど同じ名前です。もともと運動の習慣がある人たち。健診のたびに再検査の通知を受け取っている人の名前は、そこにありません。

「この取り組みで、社員の何が変わったんだろう」

この記事は、健康経営優良法人の認定をとった、またはこれからとろうとしている人事・総務・健康経営の担当者に向けて書いています。健康経営優良法人認定制度のポータルサイト「ACTION!健康経営」などで、健康経営の考え方と評価の仕組みを確かめながら、認定のあとに何を見て、施策をどう見直していけばよいのかを順にまとめました。
※この記事は、2025年10月から2026年3月に公開した健康経営に関する6本の記事を、1本にまとめ直したものです。

健康経営は、認定をとって終わりではなく「経営として続けること」

ACTION!健康経営では、健康経営を「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」と説明しています。経営理念にもとづいて従業員の健康の保持・増進に取り組むことで、組織の活性化や生産性の向上、企業価値の向上などの効果が期待される、という位置づけです。

ここで大事なのは「経営的な視点で」「戦略的に」という言葉です。健康診断や福利厚生の制度を整えることは出発点で、それを経営の課題とつなげて続けていくところまでが、健康経営に含まれています。

健康経営優良法人の認定制度のしくみ

2014年度から上場企業を対象とした「健康経営銘柄」の選定が、2016年度(平成28年度)には「健康経営優良法人認定制度」が始まっています。認定制度には大規模法人部門と中小規模法人部門があり、大規模法人部門の上位には「ホワイト500」、中小規模法人部門の上位には「ブライト500」と「ネクストブライト1000」という冠がつきます。

評価は、「法令遵守・リスクマネジメント」を前提に、次の4つの側面から行われます。

  • 経営理念・方針
  • 組織体制
  • 制度・施策実行
  • 評価・改善

4つめの「評価・改善」は、実施した取り組みの効果を検証し、その結果をもとに施策を改善することを指しています。ACTION!健康経営の「はじめよう!健康経営」のページにも、「単に施策を行えばよいだけでなく、維持継続できる組織体制や評価・改善も必要です。」と書かれています。

認定の仕組みそのものが、やってみて、確かめて、見直すことを前提にしている。そう読むと、「認定のあと、何をすればいいか」の答えは、制度の中にすでに書かれていることになります。

福利厚生と健康経営は、どこがちがうのか

福利厚生は、社員が使える制度を用意することが中心です。使うかどうかは、一人ひとりにまかされています。

健康経営は、そこから一歩進みます。自社が健康の面で抱えている課題を見つけ、その課題に合った施策にお金と時間を使い、社員の行動や状態がどう変わったかを見て、次の手を考える。同じジム補助でも、「用意した」で終わるか、「誰に届いて、誰に届いていないか」まで見るかで、意味が変わります。

ジム補助だけでは、使う人が偏ることがある

ジムの法人契約や利用補助は、運動を続けたい人の後押しになります。やめる必要はありません。

ただ、使うかどうかを本人にまかせる施策は、もともと運動している人ほど使いやすい形をしています。運動から遠ざかっている人にとっては、仕事帰りに店舗へ寄って、着替えて、ひとりでマシンに向かうまでの一歩が重い。

「行ったほうがいいのは分かってる。でも、今日も無理だな」

健康面の課題を抱えている人にとっても、この一歩は重く感じられることがあります。制度を増やす前に、その人たちに届く入口があるかを見直してみる価値があります。

健康への支出を「投資」として考える

ACTION!健康経営では、従業員の健康への投資(健康投資)が、活力や生産性の向上を通じて、業績や株価の向上につながることが期待される、と説明しています。また、経済産業省は2020年度に、従業員を無形資産ととらえた「健康投資管理会計ガイドライン」を公表しています。

同じポータルの「健康経営のメリット」のページでは、経済産業省の資料からの抜き出しとして、経済産業研究所による2021年の分析が紹介されています。健康経営度調査の企業ごとのデータを使ったもので、健康経営を経営理念に掲げて施策を実施することと、利益率とのあいだにプラスの関係が見られたとしています。その流れとして、まず健診の受診率が上がり、次に適正体重を保っている人や十分に眠れている人の割合などが改善し、問診の結果の改善が利益率の向上と関係していた、という順序が示されています。

これは、どの施策をすれば利益がいくら上がる、と約束するものではありません。それでも、「施策をする → 社員の行動が変わる → 健康状態が変わる → 経営の数字に表れる」という段階で考える手がかりになります。投資として考えるとは、このつながりを自社について言葉にして、途中の変化を確かめていくことです。

見るのは「何をやったか」より「誰の行動が変わったか」

健康経営の報告は、どうしても「セミナーを年4回開いた」「ウォーキングイベントに延べ◯人が参加した」のような、やったことの数になりがちです。やったことの記録は必要です。ただ、それだけでは「誰が来て、その後どうなったか」が分かりません。

指標は、次の3つの段階に分けて考えると整理しやすくなります。

1. 参加:誰に届いたか

参加者の人数だけでなく、内訳を見ます。部署、年代、職種、初めて参加した人の数。毎回同じ顔ぶれなのか、新しい人が少しずつ加わっているのか。ここを見るだけでも、施策が届いていない層が見えてきます。

2. 行動:毎日の過ごし方が変わったか

施策のあと、体を動かす日が増えたか、座りっぱなしの時間を意識するようになったか、睡眠はどうか。短いアンケートを、施策の前と数か月後に同じ質問でとると、変化が見えやすくなります。

3. 状態:健康や働き方に表れているか

健診の結果、ストレスチェック、エンゲージメント調査、休職や欠勤の状況など、多くの会社がすでに持っているデータです。この段階の数字は、1つの施策だけで動くものではありません。何年か続けて見る指標として置いておきます。

まず、自社の課題を一文にする

指標を決める前に、「うちの会社は、健康の面で何に困っているのか」を一文で書いてみます。たとえば「40代の営業部門で、健診の再検査の対象になる人が多い」「在宅勤務が増えてから、運動していないと答える人が増えた」。課題が具体的になるほど、選ぶ施策も、見る指標も絞れます。健診やストレスチェックの結果を部署ごと・年代ごとに分けて見るところから始めると、手元のデータだけでも課題の形が見えてきます。

社員の行動につながる施策の見直し方

運動から遠い人の「行かない理由」から考える

参加しない人には、参加しない理由があります。

  • 「着替えるのが面倒。昼休みはそれで終わってしまう」
  • 「同じ部署の人の前で、動けない自分を見せたくない」
  • 「定時後は保育園のお迎えがある」

アンケートの自由記述や、参加していない人への短いヒアリングで、こうした声を集めます。施策の中身より先に、時間・場所・服装のハードルを下げるほうが、参加の顔ぶれが変わることがあります。

職場の中に、短い時間で参加できる機会を置く

就業時間の中に、会議室や休憩スペースで、着替えずに参加できる短い時間をつくる。社外の施設に通ってもらうよりも、参加までの距離はぐっと短くなります。オンラインで同時に参加できる形にすれば、在宅勤務の人や拠点がちがう人も加われます。

このとき、上司が「行っておいで」と言いやすい時間帯かどうかも大事です。管理職が自分から参加している職場では、ほかの人も席を立ちやすくなることがあります。

運動の種類を、いくつか選べるようにする

体の状態も、好みも、人によってちがいます。座ったままできるストレッチ、昼休みのウォーキング、音楽に合わせて体を動かすダンスフィットネスなど、強さや雰囲気のちがう選択肢があると、「これならやってみようかな」と思える人が出てきます。

どの運動を選ぶにしても、上手にできることを求めない設計にしておきます。動きについていけなくても、見ているだけの回があっても、参加したことになる。その安心があるかどうかは、2回目に来るかどうかにも関わります。

ひとりで続ける施策と、みんなで参加する施策を組み合わせる

ジム補助や歩数を記録するアプリは、ひとりで続けたい人に向いています。一方、同じ時間に同じ場所で体を動かす施策は、ふだん話す機会のない他部署の人と顔を合わせる場にもなります。「この前、隣で動いていた人だ」と分かるだけで、仕事で声をかけるきっかけになることがあります。

どちらか一方に絞る必要はありません。個人で続ける入口と、みんなで参加する入口。2つあれば、届く人の幅を広げやすくなります。

小さく試して、確かめて、次の1年につなげる

新しい施策は、最初から全社で大きく始めなくてかまいません。1つの部署や拠点で3か月ほど試し、参加の内訳と、前後のアンケートの変化を見る。うまくいかなかったところは、時間帯や内容を変えてもう一度試す。この記録は、そのまま「評価・改善」の材料になります。

経営層に説明するときも、「◯回開催しました」に加えて、「これまで参加のなかった層から◯人が加わり、そのうち◯割が3か月後も続けている」と言えると、投資としての話がしやすくなります。数字が小さくても、どこに届いたかが分かる報告は、次の予算を考える材料になります。

認定は、取り組みを外から見える形にしてくれる大切な節目です。認定のあとの期間を、試して、確かめて、見直す期間として使えるかどうかで、次の申請書に書ける中身が変わります。

まずは、去年いちばん参加者が多かった施策の名簿を、部署と年代で並べてみてください。そこに名前のない人たちが、次の施策を届けたい相手です。

LinoPod は、ダンスやフィットネスを伝えたいインストラクターと、体を動かすことを楽しみたい人たちをつなぐサービスです。企業さま向けには、職場の課題や社員のみなさんの状況をうかがいながら、健康づくりのプログラムをご相談に応じて考えています。
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参考

(参考のページは、2026年10月29日に確認しました)

「健康経営®」は、特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。