「見て盗んで」はもう古い?大人クラスの継続率を変える、インストラクターの「言語化力」と指導メソッド

「踊れる」と「教えられる」の間にある大きな壁

インストラクターとして活動していると、ふとこんな悩みに直面することはありませんか?

「自分ではスムーズに動けるのに、生徒さんにその感覚が伝わらない」
「何度も同じことを伝えているけれど、なかなか上手く言えないな…」
「体験レッスンには来てくれるけれど、継続につながらない」

特に、大人向けのクラスを担当している先生からよく伺う悩みです。

プレイヤーとしての技術が高い先生ほど、「感覚」で踊ることに優れているため、その感覚を言葉にする難しさを感じることがあるかもしれません。かつては「技術は見て盗むもの」という考え方が主流でしたが、多忙な現代の大人生徒さんに対して、そのアプローチは必ずしも最適とは言えません。

今回は、ダンスインストラクターとしての価値をさらに高め、生徒さんからの信頼と継続率を向上させるための**「言語化力」と「指導メソッド」**についてお話しします。明日のレッスンから少し意識を変えるだけで、生徒さんの目の色が変わり、スタジオの雰囲気がより良くなるはずです。

大人クラスで「感覚的な指導」が通用しにくい理由

キッズクラスと大人クラスの最大の違いは、学習プロセスにあります。

子どもは模倣が得意で、理屈よりも「見たまま真似する」ことで身体感覚を掴んでいきます。一方、大人の多くは**「頭で理解してから、体に指令を出して動く」**というプロセスをたどります。

そのため、以下のような「感覚的な言葉」だけでは、多くの大人生徒さんが消化不良を起こしてしまいます。

  • 「もっとグルーヴを感じて!」
  • 「ここをパンッて弾く感じで」
  • 「あばらを閉じるイメージで」

もちろん、これらの表現が悪いわけではありません。ダンス特有のニュアンスを伝えるには必要な言葉です。しかし、体の使い方がまだ定着していない初心者の方にとっては、「具体的にどの筋肉をどう動かせばいいのか」が分からないまま、見よう見まねで動くことになりがちです。

その結果、「自分には才能がない」「ダンスはやっぱり難しすぎる…」「やった感がない」などと感じてしまい、離脱につながってしまうケースが少なくありません。大人の生徒さんが求めているのは、「なぜその動きになるのか」という納得感なのです。

「なんとなく」を卒業する!指導における言語化の3ステップ

では、感覚的な指導をどのように「伝わる指導」へ変換すればよいのでしょうか。ここでは、すぐに実践できる言語化の3ステップをご紹介します。

1. 「イメージ」を「動作」に変換する

まず、抽象的なイメージ言葉を、具体的な身体動作の指示に言い換える練習をしてみましょう。

  • NG例: 「もっと胸を開いて!」
  • OK例: 「肩甲骨を背骨に寄せるようにして、鎖骨を左右に長く伸ばしましょう」
  • NG例: 「お腹を引き上げて!」
  • OK例: 「おへその下に力を入れて、チャックを引き上げるように骨盤を立ててみましょう」

このように、「どこを」「どの方向に」「どうする」という情報を具体的に伝えることで、生徒さんは納得感を得られながら体を動かせるようになります。

2. 「なぜ」をセットで伝える

動きの指示だけでなく、その動きが必要な理由(メリット)を添えることで、生徒さんの納得感とモチベーションが高まります。

「ダウンのリズムをとる時は、膝を緩めて使いましょう。そうすることで、太ももの前側ではなく裏側の筋肉が使え、長く踊っても疲れにくくなりますよ

このように理由を添えると、生徒さんは「なるほど!」と能動的に取り組みやすくなります。

3. オノマトペと論理を使い分ける

言語化といっても、全てを理屈で説明する必要はありません。ダンスの楽しさはリズムや感覚にもあるからです。

  • まずは理論でフォームを整える(「肘を肩の高さで固定して」)
  • その後にオノマトペで質感を伝える(「そこからフワッと投げるように」)

この**「理論(フォーム)」と「感覚(質感)」のサンドイッチ**が、大人クラスにおける需要ポイントです。

生徒さんの心を掴む「フィードバック」

レッスンの満足度を左右するもう一つの要素が「フィードバック」です。一方的に修正点を指摘するだけでは、生徒さんは「ダメ出しされた」と感じてしまうこともあります。

信頼されるインストラクターは、フィードバックを**「生徒さんへのプレゼント」**として扱っています。

具体的な褒めポイントを見つける

「いいですね!」だけではなく、「さっきよりも体重移動がスムーズになりましたね」「視線が上がって表情が明るく見えましたよ」など、具体的な変化を言葉にして伝えましょう。生徒さんは「先生はちゃんと自分を見てくれている」と安心し、信頼関係が深まります。

問いかけで気づきを促す

時には答えをすぐに教えず、生徒さん自身に問いかけてみるのも効果的です。

  • 「今、右足に体重が乗った時、ぐらつきませんでしたか?」
  • 「腕をここから出すのと、こっちから出すの、どっちが回しやすいですか?」

自分で気づいて修正できた経験は、深い学びとして定着します。このような対話型のレッスンは、少人数制やパーソナルに近い環境で特に効果を発揮します。

指導力がキャリアを拓く:スタジオから企業案件まで

ここまでお話しした「言語化力」と「的確なフィードバック力」は、単にレッスンの質を上げるだけでなく、インストラクターとしてのキャリアの可能性を大きく広げます。

再現性のある指導は「企業」に響く

感覚に頼らない論理的な指導ができると、ダンス経験のない企業担当者や、健康経営を目指す企業に対しても、プログラムの効果を説明しやすくなります。「なぜこの動きがリフレッシュになるのか」「チームビルディングにどう役立つのか」を言語化できる先生は、スタジオレッスン以外の場でも重宝されます。

オンラインや動画教材での強みになる

直接手取り足取り教えられないオンラインレッスンや動画コンテンツでは、言葉だけで動きを伝えるスキルが必須です。言語化力が高い先生は、画面越しでも生徒さんを迷わせず、満足度の高いコンテンツを提供できます。

LinoPodでの活動にも直結

LinoPodでは、ダンスを単なる趣味としてだけでなく、ライフスタイルを豊かにするツールとして捉えています。生徒さんの悩みや目的に寄り添い、サポートできるインストラクターこそが、これからの時代に求められるパートナーだと考えています。

言葉はダンスと同じくらい強力な武器になる

ダンスインストラクターにとって、ダンススキルはもちろん大切です。しかし、それを生徒さんに「渡す」ための言葉のスキルを磨くことで、あなたのレッスンの価値は何倍にも膨らみます。

  1. 感覚を具体的な「動作」に翻訳する
  2. 動きの理由(メリット)を伝えて納得感を高める
  3. 具体的なフィードバックで信頼関係を築く

これらは特別な才能が必要なことではなく、今日から少しずつ意識すれば誰でも身につけられる技術です。

「先生の説明は分かりやすい」「先生のクラスだと自分が上手くなった気がする」。そんな声が増えてくれば、自然と継続率は上がり、あなた自身のキャリアも安定したものになるでしょう。

まずは次回のレッスンで、いつも何気なく使っている「その言葉」を、もう少し具体的に言い換えてみることから始めてみませんか?
あなたの言葉が、誰かのダンスライフをより輝かせるきっかけになるはずです。

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