「認定取得」がゴールになっていませんか? 今後、問われる健康経営の真価
「健康経営優良法人」の認定取得。この言葉が多くの企業の経営戦略におけるキーワードとなって久しいですが、皆様の企業ではその「目的」がどこに置かれているでしょうか。
近年、健康経営に取り組む企業数は爆発的に増加しています。2025年の最新データによれば、大規模法人部門の回答数は4,175社(前年比+7.9%)、中小規模法人部門の申請数に至っては23,485社(前年比+15.9%)と、まさに市場は活況を呈しています。特に中小規模部門においては、上位層へのモチベーションを高めるために「ネクストブライト1000」という冠が新設されるなど、競争はますます激化しています。
しかし、ここで立ち止まって考えていただきたいのが、「認定を取ること」自体がゴールになってしまっていないか、という点です。
「とりあえず企業イメージ向上のためにホワイト500を目指そう」
「他社がやっているから、うちも何か福利厚生を導入しなければ」
こうした動機で導入された施策は、得てして「形だけの健康経営」に陥りがちです。従業員に参加を促しても、「忙しいから」と断られ、結局利用するのは元々健康意識の高い一部の社員だけ。経営層からは「コストばかりかかって効果が見えない」と指摘される――。そんなジレンマを抱えている担当者の方も少なくないのではないでしょうか。
「実施」から「成果(アウトカム)」へ。評価基準の質的転換
実は、2025年から2026年にかけて、健康経営の評価基準には大きなパラダイムシフトが起きています。それは、従来の「施策を実施したかどうか(プロセス)」重視から、「結果・成果(アウトカム)」重視への転換です。
これまでのように、「ジムの法人契約をしました」「ウォーキングイベントを開催しました」という事実だけでは、十分な評価が得られなくなってきています。問われるのは、「それによって従業員の行動変容が起きたか?」「運動習慣は定着したか?」「具体的な数値改善は見られたか?」という実質的な効果です。
さらに、女性の健康課題(フェムテック)や、高年齢労働者の増加に伴う具体的なフィジカル対策も必須項目化されつつあります。つまり、企業は今、単なる福利厚生としての健康施策ではなく、**確実なROI(投資対効果)を生み出す「戦略的なプログラム」**を求めているのです。
本記事では、この転換期において企業が目指すべき「真の健康経営」について、特に「ダンスフィットネス」という身体的アプローチがいかにして組織の課題を解決し、多面的なROIを生み出すのか、そのメカニズムと可能性を紐解いていきます。
なぜ「ダンス」が組織を変えるのか? 脳科学から見る「デュアルタスク」の威力
「オフィスでダンスなんて、気恥ずかしい」
「運動神経の良い人しか楽しめないのではないか」
そう思われる方もいるかもしれません。しかし、私たちが提案するビジネスシーンでのダンスフィットネスは、単なるレクリエーションやお遊びではありません。それは、脳科学に基づいた**「脳と身体の同時開発プログラム」**なのです。
「飲み会」に代わる、ダイバーシティ時代の共通言語
かつて、日本の組織におけるコミュニケーションの主役は「飲み会」でした。アルコールの力を借りて本音を語り合い、チームの結束を固める。それは一つの有効な手段でしたが、ダイバーシティが浸透した現代においては、唯一の正解ではなくなりました。
アルコールが体質的に受け付けない社員、育児や介護で夜の時間は確保できない社員、そもそもプライベートの時間を重視したい若手社員。こうした多様な背景を持つ人々が、誰もが対等に参加できる「共通言語」とは何でしょうか。
それが**「健康(ウェルビーイング)」**であり、共に身体を動かすという体験です。
身体を動かすことに、役職や年齢、性別は関係ありません。同じ音楽を聴き、同じリズムを共有する。そのシンプルな体験が、言葉の壁や立場の壁を容易に超えさせます。LinoPodが提供するプログラムは、激しい動きだけを追求するものではありません。座ったままのリズムトレーニングや、運動強度を調整できるインクルーシブな設計により、運動経験を問わず全員が「対等」に参加できる場を提供します。
脳を覚醒させる「マルチタスク」のメカニズム
なぜ、数ある運動の中で「ダンス」がビジネスパーソンに最適なのでしょうか。その秘密は、ダンス特有の**「デュアルタスク(二重課題)」効果**にあります。
ダンスをしている時、私たちの脳内では驚くべき情報処理が行われています。
- 聴覚情報処理:音楽のリズムやメロディを聞き取る。
- 視覚情報処理:インストラクターの動きを見て、情報を入力する。
- 運動指令:見た動きを脳内で変換し、自分の筋肉に指令を出す。
- フィードバック制御:自分の動きがリズムに合っているか瞬時に判断し、修正する。
これらを同時に行うことは、脳の前頭葉(司令塔)を強力に刺激します。単調なランニングや筋力トレーニングとは異なり、ダンスは「考えながら動く」という高度な知的活動なのです。このプロセスは、認知機能を高め、集中力や判断力を向上させるリフレッシュ効果があり、結果として午後の業務生産性の向上に直結します。
「やらされる」から「やりたくなる」へ。行動変容のデザイン
健康経営の最大の課題は「継続率」です。どんなに良いジムを契約しても、社員が通わなければ意味がありません。しかし、多くの人が運動を「辛い努力」と捉えてしまっています。
ここで重要なのが、脳の報酬系へのアプローチです。音楽に合わせて体を動かす高揚感、リズムに乗れた瞬間の快感。これらは脳内でドーパミンの分泌を促し、**「動的マインドフルネス(フロー状態)」**を作り出します。
「健康のためにやらなければならない」という義務感(努力)ではなく、「楽しいからまたやりたい」という自発的な欲求(報酬)へとスイッチを切り替える。LinoPodのプログラムは、この**「行動変容」**を科学的にデザインしています。プロのインストラクターが現場の空気を読み、運動消極層も自然と巻き込んでいく。その「場作り」の技術こそが、高い継続率とアウトカム(成果)を生み出す鍵なのです。
人事戦略としての健康経営。「人材の再発見(Rediscovery)」という新たなROI
ここからが本記事の核心です。2025年以降の健康経営において、最も重視すべき視点。それは、健康施策を単なる「健康維持活動」としてではなく、**「人事戦略の一環」**として捉え直すことです。
私たちはこれを、**「人材の再発見(Rediscovery)」**と呼んでいます。
フラットな関係性から見える「素顔」と「隠れたリーダーシップ」と「人間的魅力」
普段のオフィスでは、誰もが「部長」「課長」「新人」といった役割(ロール)を演じています。会議室での発言は、その役割に縛られたものになりがちです。
しかし、フィットネスウェアに着替え(あるいはそのままの服装でも)、音楽が鳴り響くスタジオや会議室で身体を動かす時、その「役割の鎧」は一時的に脱ぎ捨てられます。社長も新入社員も、同じようにリズムに苦戦し、同じように汗をかき、笑い合う。このフラットな場において、従業員の**「素顔」や「潜在的な特性」**が驚くほど鮮明に浮かび上がってくるのです。
- 普段は口数が少ないエンジニアが、複雑なステップを論理的に分解して周囲に教えている姿。
- 若手社員が、遅れがちな年配の上司をさりげなくサポートするフォロワーシップ。
- 強面(こわもて)の管理職が、失敗を笑顔で受け入れ、場の雰囲気を和ませるムードメーカーとしての一面。
これらは、デスクワークやオンライン会議だけでは決して見ることのできない、その人の**「身体的知性」や「人間的魅力」**です。
現場の熱量が「必要な研修」を教えてくれる
この「再発見」は、企業にとって極めて重要なデータとなります。
例えば、チームビルディングの研修を企画する際、座学で「リーダーシップとは」を教えるよりも、ダンスプログラムの中で自然と発生したリーダーシップを評価し、伸ばす方がはるかに効果的かもしれません。
また、部門を超えた交流の中で、「この人とこの人は相性が良さそうだ」「このチームにはこういうタイプのファシリテーターが必要だ」といった組織編成のヒントが見つかることもあります。活動を通じて従業員の特性を把握することで、**「今、組織に本当に必要な研修は何か」**が明確になり、無駄な研修コストを削減しつつ、精度の高い人材開発が可能になるのです。
心理的安全性が生む「イノベーション」の土壌
役職を超えてリズムを合わせる「一体感のスイッチ」は、理屈抜きの連帯感を生み出します。「一緒に汗をかいた」という原初的な体験は、相手への警戒心を解き、心理的安全性の強固な土台となります。
この**「ありのまま言える空気」が整った組織では、発言へのためらいが消え、活発な意見交換が始まります。部門の壁を超えた何気ない雑談が生まれ、そこから新しいアイデアや業務改善のヒントが飛び出す。つまり、ダンスによる交流は、最終的に「イノベーションの創出」**という経営課題を解決する強力なエンジンになるのです。
戦略的ROIの定義:コスト削減を超えた「4つの成果指標」
冒頭で述べた通り、これからの健康経営には「多面的なROI」が求められます。医療費の削減や欠勤率の低下といった「守りのROI」だけでなく、企業の成長を加速させる「攻めのROI」をどう定義し、KPIとして設定するか。以下に、LinoPodが考える4つの戦略的成果指標を提示します。
1. パフォーマンス向上(生産性)
- 指標例:プレゼンティーイズム(出勤しているが体調不良等で生産性が低下している状態)の改善率、従業員エンゲージメントスコア、集中力持続時間の自己評価。
- 解説:デュアルタスク効果による脳の活性化と、適度な運動によるリフレッシュ効果が、日々の業務パフォーマンスを最大化します。
2. コミュニケーション活性化(サイロ化の解消)
- 指標例:他部署との接触頻度、社内イベント参加率、従業員アンケートにおける「職場の雰囲気」スコア。
- 解説:部門横断的なフィットネスイベントを実施することで、縦割り組織の弊害を解消し、組織全体の風通しを良くします。
3. イノベーションの創出
- 指標例:新規事業提案数、業務改善提案件数、社内プロジェクトの組成数。
- 解説:心理的安全性の向上により、失敗を恐れずに新しいことに挑戦する風土が醸成されます。
4. 人材開発と制度への還元
- 指標例:研修プログラムの満足度と行動変容率、離職率の低下、採用時の魅力度(ブランディング効果)。
- 解説:活動を通じて得られた従業員の特性データを、人事配置や研修計画、評価制度のブラッシュアップに活用します。これにより、人事施策全体の精度と効果が向上します。
「健康への投資」を、企業の未来を創るエンジンに変える
健康経営はもはや認定取得を目指すだけのフェーズを終えました。形式的な制度作りはあくまでマイルストーンに過ぎず、真の目的はその先にあります。
今、企業に求められているのは、従業員一人ひとりが心身ともにベストコンディションを保ち、そのポテンシャルを最大限に発揮できる環境を整えること。そして、活動を通じて互いの人間性を再発見し、強固な信頼関係に基づいたチームを構築することです。
その解決策の一つとして、LinoPodは「健康」という観点からダンスフィットネスに注目しています。 特別な設備投資は必要ありません。既存のスペース、音楽、そして共に動く仲間。そこにプロフェッショナルによる「場作り」の技術が加わることで、硬直化したコミュニケーションは変化します。
「健康への投資」は、福利厚生という名のコスト(費用)ではありません。組織の生産性を高め、イノベーションの土壌を耕し、次代のリーダーを育てる**「企業の成長エンジンへの投資」**です。
