【ダンスの科学】なぜ今、医学やAIが「踊る体」に注目するのか?指導者と学習者が知っておくべき最新研究ガイド

ダンスは長い間、「感性」や「センス」の世界だけで語られてきました。
しかし今、その潮流は大きく変わりつつあります。

医学、教育学、そして人工知能(AI)。
権威ある研究機関や専門家たちが、「ダンスが人間に与える科学的効果」を次々と解明し始めています。

  • 怪我を予防し、長く踊り続けるための医学的メソッド
  • 子供の心身の発達や、高齢者の健康寿命に与える影響
  • AIが解析する身体表現の新たな可能性

本記事では、国内の主要な研究者や実践家の取り組みを体系化しました。
指導者にとっては「裏付けのある指導」のヒントとして、学習者にとっては「ダンスの奥深さ」を知るきっかけとして、ぜひご活用ください。

1. 【Medical】医学と解剖学が変える「ダンサーの常識」

「痛くても我慢して踊る」時代は終わりを告げました。現在は、スポーツ医科学の知見をダンスに応用し、パフォーマンス向上と怪我予防を両立させるアプローチがスタンダードになりつつあります。

大学機関による「ダンス医科学」の確立

日本のダンス医科学を牽引しているのが、お茶の水女子大学の水村(久埜)真由美教授です。
日本ダンス医科学研究会(JADMS)の代表理事も務める水村教授は、バレエダンサーの身体機能や傷害予防について専門的な研究を行っています。

「根性」ではなく「エビデンス」に基づいた身体管理は、プロフェッショナルを目指す層だけでなく、趣味で楽しむ層にとっても不可欠な知識です。

参考リンク:日本ダンス医科学研究会(JADMS)

現場で活躍する「理学療法士(PT)」たち

研究室の中だけでなく、実際のスタジオ指導の現場でも「医学的視点」を持つインストラクターが増えています。

例えば、SPRINGS PILATES STUDIOでは、濱口由美子氏や松園健氏をはじめ、理学療法士の国家資格を持つインストラクターが多数在籍しています。ピラティスやジャイロトニック®︎といったメソッドを用い、解剖学に基づいたコンディショニングを提供しています。

参考リンク:SPRINGS PILATES STUDIO インストラクター紹介

また、aoi氏のように「発育ダンス認定講師」と「理学療法士」の両方の視点を持ち、ダンス×ヨガ×パラスポーツを融合させた活動を行う指導者も登場しています。医療の知識がダンスの敷居を下げ、安全性を高めている好例と言えるでしょう。

参考リンク:aoi氏 Instagram

2. 【Education & Society】教育と社会課題を解決するツールとして

中学校でのダンス必修化以降、教育現場におけるダンスの価値は再評価されています。また、超高齢社会における「健康資産」としても注目が集まっています。

学校体育における「育む力」

順天堂大学の中村恭子先生は、学校体育におけるダンス教材の開発や、授業分析を行っています。
ダンスは単なる身体運動にとどまらず、表現力やコミュニケーション能力といった「生きる力」を育む教育プログラムとして、アカデミックな視点からもその効果が実証されつつあります。

参考リンク:順天堂大学 研究者情報

「誰でも踊れる」が社会を救う

高齢者や障がい者を含む、あらゆる人々がダンスを楽しめる環境づくりも進んでいます。

TRFのSAM氏が考案した一般社団法人ダレデモダンスは、高齢者や主婦層など、これまでダンスに縁のなかった人々に向けて、無理なく身体を動かせるメソッドを普及させています。

参考リンク:一般社団法人ダレデモダンス

また、島田ひかり氏(JDAC)のように、理学療法士でありながらダンス教育指導士・介護予防指導士として活動する専門家もおり、医療と介護予防をつなぐ架け橋としてダンスが機能しています。

参考リンク:JDAC 講師紹介

3. 【Technology & Future】AIと身体表現の未来

テクノロジーの進化は、振付や身体表現の解釈にも変革をもたらしています。

AIとの共創・身体の数値化

神戸大学の吉田駿太朗先生は、AI(人工知能)を用いた振付生成や、ダンスの身体性を数値化する研究を行っています。
「人間が思いつかない動き」をAIが提案し、それを人間が踊ることで新たな表現が生まれる。そんなSFのような共創が、すでに研究レベルで始まっています。

参考リンク:researchmap(吉田駿太朗氏)

言語と身体の翻訳プロセス

フランスのモンペリエ国立振付センターなどで研究を行ってきた藤田一樹氏は、「言葉と身振り」の関係性や翻訳プロセスという、より哲学的なアプローチでダンスを研究しています。
理論と実践を融合させたこうした活動は、ダンスを「知的な探求」として捉え直すきっかけを与えてくれます。

参考リンク:藤田一樹氏 プロフィール


編集後記:知識は、感性を支える「確かな土台」になる

「理屈で考えると、ダンスの純粋な楽しさが減ってしまうのでは?」 そう感じる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、正しい知識は決して感性を邪魔するものではありません。 むしろ、私たちが大切にしている感覚を、**より自由に、より確実にするための「土台」**となるものです。

医学的根拠を知ることは、怪我への不安を減らし、長く踊り続けるための安全基地になります。 教育的価値を知ることは、社会の中でダンスを指導する際の、揺るぎない自信になります。 また、上達のスピードが早くなるかもしれません。そして、最新技術を知ることは、既存の枠にとらわれない新しい表現のヒントを与えてくれます。

「感覚」だけでは辿り着けない場所へ、「科学」という視点を持って。 linopod.comは、これからもダンサーと指導者の皆様に、実用的な知見をお届けしていきます。

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