ビジネスは高度な「チームスポーツ」。なのに練習不足かも?と言う視点で考えてみる。
ビジネスの現場は、年々スピードと複雑さを増しています。その様相は、まるで刻一刻と状況が変化する**「高度なチームスポーツ」**のようにも考えられます。サッカーやバスケットボールのチームが、戦術の理解だけでなく、日々のパス回しや連携プレーを体で覚えるように、ビジネス組織にも「身体的な連携」のトレーニングが必要なのかも…と言う視点で今回は見てみましょう。
現代のオフィスの風景はどうでしょう。パソコンに向かって黙々と作業をし、会議室では言葉だけで議論を交わす。これはスポーツに例えるなら、**「黒板の前で戦術論ばかり話し合って、一度もグラウンドでボールを蹴り合っていない」**状態に近いかもしれません。
ここでは、ダンスや身体表現というアプローチを通じて、「頭で考えれる」になりがちな組織に、本来の躍動感を取り戻す、単なる運動不足解消ではない、**組織のOS(オペレーションシステム)にアップデートもたらすものは何か?について紐解いていきたいと思います。
「わかる」と「できる」の壁を壊す:動くチームにもたらすもの
「心理的安全性が必要だ」「活発なコミュニケーションが大事だ」。そう頭ではわかっていても、いざ会議になると空気を読んで沈黙してしまう。これは、論理(ロジック)だけで組織を変えようとする限界を示しています。
ここで、ダンスや身体活動といった**「ノンバーバル(非言語)」**な要素を取り入れる意味が出てきます。
ミラーニューロンが起こす「あうんの呼吸」
人間には「ミラーニューロン」という神経細胞があり、他者の動きを見るだけで、まるで自分が動いているかのように脳が反応すると言われています。ダンスやリズム運動で同じ動きを共有することは、理屈抜きで**「相手の感覚を自分のものとして感じる」**強力な同期体験を生み出します。
言葉で「仲間を信頼」と説得するよりも、一緒に同じリズムでステップを踏む数分間の方が、脳レベルでの「仲間意識(シンクロニー)」を醸成するスピードは圧倒的に速いのです。
即興性が生む「ナイスカバー」の精神
ビジネスと同様、ダンスにも予期せぬことは起こります。誰かが振付を間違えたり、リズムがズレたりした時、周りがどう反応するか。
ダンスプログラムでは、こうした「ズレ」を**「間違い」ではなく「新しい展開」として捉えるワークを行います。「あ、間違えた!」と萎縮するのではなく、周りが即座にその動きに合わせてフォローし、笑い合う。この体験は、ビジネスにおける「ミスを責めずにカバーし合う文化」**や、変化に強いレジリエンス(回復力)を育む土壌となります。
リーダーシップ「リード&フォロー」の体感
組織開発において、ダンス、特にペアダンスの概念は非常に示唆に富んでいます。そこには**「リード&フォロー」**という関係性があるからです。
一般的なイメージとは異なり、優れたリーダー(リード役)は、相手を強引に引っ張り回したりはせず、パートナーの重心や呼吸を感じ取り、「次はこっちに行こう」という合図を、相手が動きやすいタイミングで優しく伝えます。
一方のフォロワー(フォロー役)も、ただ従うだけではありません。リーダーの意図を感じつつ、自らもアクティブに動き、時にはリーダーにエネルギーを返します。
この身体的なやり取りを通じて、参加者は以下の気づきを得ます。
- リーダーシップとは支配ではなく、相手のポテンシャルを引き出す「ガイド」であること
- フォロワーシップとは受動的な服従ではなく、能動的な「貢献」であること
上司が部下の役割(フォロー)を体験し、部下がリーダー役をやってみる。役職という固定された「名札」を外し、身体を通して役割を交換することで、相互理解は劇的に深まります。
データで見る「コンディション」の経済的価値
ここで少し、経営的な視点(データ)に立ち返ってみましょう。
経済産業省が推進する「健康経営」の文脈において、近年特に注目されているのが**「プレゼンティーイズム」の解消です。これは「出勤はしているが、心身の不調によりパフォーマンスが低下している状態」を指します。調査によれば、このプレゼンティーイズムによる経済的損失は、欠勤(アブセントイズム)による損失の3〜5倍**にものぼると言われています。
スポーツチームで言えば、**「試合には出ているが、コンディションが悪くて走れない選手」**がフィールドに大勢いる状態です。これでは勝てる試合も勝てません。
2050年にはヘルスケア市場が約60兆円に拡大すると予測されていますが、企業にとっての「健康」は、もはや福利厚生(コスト)ではなく、**「勝つためのチームメンテナンス(投資)」**です。
身体を動かし、血流を良くし、脳の「警戒モード、身構えモード」を解くことは、個人のメンタルヘルスを守るだけでなく、組織全体の生産性という「得点力」に直結します。
まずは「リズムを合わせる」ことから始めよう
「ダンスなんてハードルが高い」「ウチの社員は恥ずかしがるだろう」でも…ダンスは多種多様でニーズに応じて組み合わせが可能なのです。
フィットネスダンスと言って、親和性のある楽曲に合わせて運動不足を解消しながらカラダを動かすものから、ストレッチ要素を入れたものや、チームでダンスフォーメーションを意識して踊るものや様々です。
何にフォーカスするかによって組み方が変わってきます。
- 会議の冒頭、1分間だけ全員で立ってストレッチをする
- ブレインストーミングの前に、簡単なリズムに合わせてステップを踏む
- 良いアイデアが出たら、言葉だけでなくハイタッチや拍手で身体的に称賛する
まずはこうした**「身体的な遊び(プレイフルネス)」**を少し取り入れるだけでも、場の空気は驚くほど変わります。身体の動きにフォーカスしたものではありますが、実は「脳トレになる」という声も多く聞きます。
カチカチに固まった組織の関節に、少しだけ「潤滑油」を差すイメージです。
チームが本来持っている「良さ」を引き出し、最高のパフォーマンスを発揮できる「動けるチーム」へと進化するために、まずは頭だけでなく、フィジカルにも刺激を入れてみましょう。
