健康経営と商品開発:インストラクターが解き明かす潜在需要

データはあるのに「正解」が見えない:ウェルネス市場のジレンマ

「市場調査のデータは揃っている。ペルソナも詳細に設定した。機能テストの数値も完璧だ。それなのに、なぜユーザーの心に響かないのだろうか?」

スポーツウェアや健康食品、ウェルネスガジェットの商品企画に携わる皆様であれば、一度はこのような**「データの壁」**に直面したことがあるのではないでしょうか。

ウェルネス市場が成熟し、機能的な差別化が難しくなった今、消費者が求めているのはスペック上の数値だけではありません。「着た瞬間に気持ちが上向くフィット感」や「飲むことで自分を大切にしていると感じられる余韻」といった、情緒的な価値です。

しかし、こうした感覚的な価値は、従来のアンケート調査やビッグデータ解析といった定量的なアプローチでは掬い上げることが困難です。ここに、多くの開発現場が抱える「インサイトの枯渇」という根本的な課題があります。

なぜ、ユーザーの声は開発現場に届かないのか

ユーザーインタビューやグループインタビューを行っても、期待したような「画期的な発見」が得られないことがあります。その原因の一つは、**「ユーザー自身も、自分の身体感覚を言語化できない」**という点にあります。

例えば、新しいヨガウェアを試着した一般ユーザーは、「なんとなく動きにくい」とは言えても、「肩甲骨周りの生地の伸縮方向が、可動域に対して5度ズレているため、呼吸が浅くなる」とは説明できません。

開発チームが論理とスペックで設計した製品と、ユーザーが直感的に感じる「快・不快」の間には、埋めがたい**感覚のズレ(乖離)**が存在します。このズレを解消しない限り、どれだけマーケティング予算を投下しても、ユーザーの熱狂を生むことはできません。

「身体の翻訳者」としてのダンスインストラクター

では、この「言語化できない身体感覚」を誰が解読できるのでしょうか。私たちが提案する解決策、それが**「ダンスインストラクター」**という専門家の活用です。

ダンスインストラクターは、単に「ダンスを教える人」ではありません。彼らは以下のような特殊な能力を持つ**「身体の翻訳者」**です。

  • 高解像度の身体感覚: 自身の筋肉や骨格の動きをミリ単位で制御し、素材の質感や重心の変化に極めて敏感です。
  • 他者観察のプロ: 日々、数十人〜数百人の生徒の動きを見続け、「どこに負荷がかかっているか」「何が動きを阻害しているか」を瞬時に見抜きます。
  • 言語化能力: 目に見えない身体感覚を、生徒に伝えるために言葉(比喩や擬音語含む)に変換する訓練を積んでいます。

彼らをリサーチのプロセスに巻き込むことで、一般ユーザーが「なんとなく」で片付けてしまう違和感を、具体的な開発言語へと翻訳することが可能になります。

活用事例:数字ではなく「温度」を測るリサーチ手法

ダンスインストラクターを活用した「体験型リサーチ」は、従来の手法とは一線を画します。それは、単に機能の優劣を判定するのではなく、製品がもたらす**「体験の質」**を深掘りするプロセスです。

具体的な活用アプローチには以下のようなものがあります。

1. 動的フィッティングと評価

静止状態でのサイズ確認ではなく、激しい動きの中でのウェアの追従性や、汗をかいた時の肌触りの変化を検証します。インストラクターは「この縫い目が、特定のステップを踏む際に0.5秒の遅れを生む」といった、プロならではのフィードバックを提供できます。

2. インサイトの発掘(KOLとしての対話)

インストラクターは、生徒(エンドユーザー)の悩みや本音を誰よりも知っています。「最近、生徒たちがプロテインに求めているのは味ではなく、飲み終わった後の『軽さ』だ」といった、現場感のある定性データは、マーケティングの方向性を決定づける重要な手がかりとなります。

3. 共創型マーケティングへの展開

開発段階から関わったインストラクターは、その製品の最大の理解者でありファンとなります。彼らが自身のコミュニティで発信する熱量の高い言葉は、広告よりも信頼性の高いUGC(User Generated Content)として機能し、自然なバイラルを生み出します。

これはまさに、**「数字ではなく温度を測る」**作業です。冷たいデータだけでは見えなかった、ユーザーの熱や感情の動きを捉えることができるのです。

健康経営の視点をプロダクトへ:真のウェルネス企業であるために

昨今、多くの企業が従業員の健康を守る「健康経営」に取り組んでいます。ウェルネス企業である皆様においては、この哲学を社内だけでなく、**商品開発(プロダクト)**にも適用すべきではないでしょうか。

健康経営が「従業員のウェルビーイング」を追求するように、商品開発もまた「顧客の真のウェルビーイング」を追求する。

インストラクターという「身体のプロ」の知見を借りることは、表面的な健康訴求を超えて、ユーザーの心身に深く寄り添う製品を作るための最短ルートです。スペック競争から脱却し、**「人の身体を深く理解しているブランド」**としての信頼を築くことこそが、これからの時代の競争優位性となります。

感性とデータが融合する未来へ

  • インサイトの枯渇は、定量データへの偏重と、ユーザーの言語化能力の限界から生じている。
  • ダンスインストラクターは、身体感覚の解像度が高く、ユーザーの無意識のニーズを言語化できる「翻訳者」である。
  • 数字だけでなく、**「温度(感情や身体感覚)」**を測るリサーチを取り入れることで、開発とユーザーの乖離は解消される。

技術がいかに進化しても、最終的に製品を使うのは生身の人間です。
データサイエンスと、インストラクターという「ヒューマンインサイト」を掛け合わせることで、御社のマーケティングは新たな次元へと進化するはずです。

LinoPodでは、多様なジャンルのダンスインストラクターとのネットワークを活かし、御社の課題に合わせたリサーチ・開発支援を行っています。「データでは見えない何か」を探しているなら、ぜひ一度、身体のプロたちの声に耳を傾けてみてください。

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