データは語るが、核心は語らない?ウェルネス市場の現在地
「市場調査のデータ通りに作ったのに、なぜか響かない」
新商品のローンチ後、このような焦燥感に駆られたことはないでしょうか。健康食品やフィットネスウェア、ウェルネスガジェットの市場は、**「健康経営」**というキーワードの浸透とともに急速に拡大しました。また個人の健康意識もかつてないほど高まってきています。
しかし、市場の成熟は「コモディティ化」という副作用をもたらしました。機能性成分の含有量、吸汗速乾の数値、アプリの機能数……。競合他社とのスペック競争に勝つための定量データは、もはや飽和状態です。
マーケターや開発者が直面しているのは、情報の不足ではなく、**「データだけでは見えない消費者インサイトをどうやって知るか?」**ではないでしょうか。ユーザー自身ですら言語化できない、「なんとなく好き」「使っていて心地よい」という情緒的な価値を、どのようにして製品に落とし込むか。これが、次のヒット商品を生むための難しいところです。
スペック偏重が招くユーザーとの乖離を考える
健康経営が広まり、BtoBtoE(企業を通じて従業員へ)のチャネルも重要視される中、多くのプロダクトが陥りやすい点があります。それは、「正しさ」が「楽しさ」や「心地よさ」を上書きしてしまうことです。
開発チームは、医学的エビデンスや工学的数値を追求します。それはもちろん重要ですが、ユーザーが日常的に使い続けたいと思う動機は、もっと感覚的な部分に宿ります。
- 「数値上は完璧な着圧だが、動くと微妙に不快」
- 「成分は最高だが、飲む瞬間の高揚感がない」
- 「機能は豊富だが、操作に温かみを感じない」
この**「開発側の論理」と「ユーザーの身体感覚」のズレ**こそが、リピート率が伸び悩む最大の要因です。机上のデータ分析や、モニターへのアンケート調査もとても重要ですが、この微細な「身体的違和感」や「感覚的な喜び」をすくい上げるためにはもう一つの視点も入れたいところです。
解決の鍵は「身体の感覚のプロ」という視点
では、どうすればこの「感覚のズレ」を埋められるのでしょうか。ここでは、ダンスインストラクターをリサーチのプロセスに巻き込むというアプローチをご紹介します。
なぜダンスインストラクターなのか?「微細な違和感」を検知する能力
ダンスインストラクターは、単に「踊りを教える人」ではありません。彼らは、音楽、空間、他者の動き、そして自分自身の筋肉や関節の微細な反応を、瞬時に感じ取り調整する**「身体のプロフェッショナル」**です。
彼らは、一般のユーザーが「なんとなく使いにくい」と感じて離脱してしまう原因を、解像度高く言語化する能力を持ってる場合があります。
- 「このウェアの縫い目は、肩甲骨を寄せた瞬間に0.5秒の遅れを生む」
- 「このプロテインの粘度は、運動直後の呼吸のリズムと合わない」
このように、無意識レベルのストレスを検知し、開発言語へと翻訳してくれる存在。それがインストラクターなのです。
身体で覚えている感覚による:同じ動きの中で見つけるインサイト
従来のリサーチ(デプスインタビューや行動観察)は、あくまで「外部からの観察」でした。しかし、ダンスインストラクターを活用したリサーチでは、開発者自身も彼らと共に身体を動かし、同じ空間で汗を流すプロセスを推奨しています。
共に動き、呼吸を合わせることで、**「身体的共感(Physical Empathy)」が生まれます。理屈ではなく身体で「あ、こういうことか!」と納得する瞬間。この「共振」**から得られる気づきこそが、誰にも真似できない強力なインサイトとなります。
「数字ではなく温度を測る」体験型リサーチの実践
具体的に、この手法をどのようにビジネスに取り入れるべきか、いくつかの視点を提供します。
1. 開発初期の「違和感検知」パートナーとして
プロトタイプが完成する前の段階で、インストラクターを招聘します。完成品を評価してもらうのではなく、素材選びやコンセプト設計の段階で、「身体感覚としてどうか?」を問いかけます。彼らの直感的なフィードバックは、開発の方向修正を早め、手戻りを防ぐ羅針盤となります。
2. マーケティングにおける「熱源」としての活用
従来のインフルエンサー施策は、フォロワー数(数字)を重視しがちでした。しかし、インストラクターとの共創プロセスを経た商品は、彼ら自身にとって「自分が関わった、心から勧めたいもの」になります。
彼らのスタジオやコミュニティで語られる言葉には、広告にはない**「リアル」**が宿ります。それはやらされたPRではなく、自然発生的な推奨であり、質の高いUGC(ユーザー生成コンテンツ)の起点となります。
ポイント:
ユーザーを遠くから分析するのではなく、ユーザーの身体を知り尽くしたインストラクターという「翻訳者」を介して、深くプロダクトに没入すること。
身体が『これだ』と反応するプロダクトが選ばれ続ける
健康経営という言葉が定着しつつあり、ウェルネスが社会インフラとなりつつある今、求められているのは「正しい商品」以上に、人の心を動かす**「愛される商品」**です。
データは過去を説明できますが、未来の熱狂を作るのはデーターに加え人間の感性です。ダンスインストラクターという「身体知」のエキスパートと共に、数字ではなく**「リアルな温度」**を測るリサーチへ。
ユーザーの生活を彩る本質的な価値創造につながり愛される商品が生まれるために、企業の持つ『データ』と、インストラクターの持つ『身体知』。 異なる二つの強みを掛け合わせ、ユーザーの生活を彩る『愛される商品』を、共に創り上げていきましょう。
