集中力、協調性、心身の調和、反応力を鍛えられる!? 大人にも広まりつつあるリトミック

「リトミック」という言葉は保育の場で耳にすることが多く、子どもの音楽教育に有効というイメージを持つ方は多いのではないでしょうか?子どもの音楽教育の一環としてリトミックは世界中で普及されています。

そこで、本記事ではリトミックについて詳しく解説します。発祥や取り組む内容、メリットや大人のリトミックについてなど幅広くお伝えするので、リトミックを子どもに習わせたい方や、リトミックの指導者になりたい方など、リトミックに興味のある方はぜひ参考にしてみてください。

リトミックとは?発祥について解説

リトミックとは、音楽を通して体の動きを教える教育法のことです。スイスの作曲家エミール・ジャック=ダルクローズ(1865-1950)が開発しました。

開発のきっかけは、ジャック=ダルクローズが生徒に和声楽とソルフェージュを教えていたときのことです。高度な音楽訓練のためには、楽譜を読み書きしたり楽器を演奏したりする前に、音を聴く力を養う必要があると気づきました。また、身体と脳が発達している幼い時期に音楽能力を身につける必要があるとも示しています。

その後、リトミックは聴覚だけではなく、筋肉や神経の働きによって音楽の感覚を高めるという考えのもと音楽教育の体系化が進みました。

リトミックを日本に導入

リトミックを日本に初めて導入したのは、歌舞伎の二代目市川 左団次(1880-1940)です。ロンドンでダルクローズのレッスンを受け、日本に帰国後、俳優養成にリトミックを取り入れました。

その後は作曲家や劇作家、舞踏家などがリトミックを学び、舞踊や演劇界に大きな影響を与えています。(音楽教育の一環となったのは大正時代に入ってから)

リトミックの捉え方は二つ

ジャック=ダルクローズのリトミックは「基礎部分であるリズム運動」「教育法全体」の二つの捉え方があります。

現在主流となっているのは「基礎部分であるリズム運動」で、ピアノに合わせて動いたり音楽に合わせて身体で表現したりします。続いて「教育法全体」とはリトミックやソルフェージュ、即興演奏といった音楽教育全体のことです。

このことから、ジャック=ダルクローズのリトミックは「音楽教育の一部と捉えるか、全体と捉えるか」という違いがあります。ただし、どちらもリズム感覚と聴覚の訓練が重要であることは同じといえます。

リトミックの取り組みは?年齢別に解説

リトミックはソルフェージュや即興演奏から始めるのではなく、まずは筋肉感覚と聴覚を一緒に働かせるリズム運動によって、内側の音楽的感覚を身につけます。子どもの場合は年齢ごとに取り組む内容が異なるので、0~5歳までの年齢別に取り組む例を見ていきましょう。

0歳

環境を整えることで0歳でもリトミックを取り組めます。ただし、音楽スクールによっては開始できる月齢が異なる可能性があるので、事前に確認しておきましょう。

0歳児のリトミックは音楽への興味関心を引き出します。たとえば、親が子どもをハグしながら音楽に合わせて身体を揺らし、音楽が止まったら動きを止めます。このような「動と静」によって子どもは音楽に耳を傾け、感じ取ろうとするでしょう。また、タンバリンを用意することで、子どもたちは楽器と身体を使って音を出す楽しさを知ります。

このように0歳児のリトミックは音楽に慣れ親しむことを目的とし、家族で子どもの成長を見守ります。

1~2歳

1~2歳児は見て真似ることに長けているので、よい環境を整えて親子で一緒にリトミックを楽しみましょう。また、グループでの取り組みにすることで、友達との触れ合いも経験できます。

具体的には、音楽に合わせて身体を動かしたり、マラカスや鈴などの楽器を使ってリズム感覚を身につけたり。

また、いろんな音楽を聴いて、感性を育む取り組みもあります。たとえば、音楽を聴いたイメージを表現するために、色塗りや貼り絵、折り紙などを使って親子で絵本を完成させて物語を創ります。

このように1歳児のリトミックでは脳の発育を促し、音楽を表現する楽しみを学びます。

3歳

3歳になると「なんで?」という言葉が増えて模倣期から創造期へ移るので、リトミックを通してリズミカルな思考と身体を育みましょう。

取り組みは表現の幅を広げる内容です。1~2歳で音楽に合わせた絵本を作成していましたが、さらにさまざまな形や色を描くことで表現の幅を広げます。

他にも言葉のリズムを打ったり、ステップしたりする取り組みも行いながら、数字を数えて数の概念形成も進めていくケースもあります。

4歳

4歳は模倣期から脱皮しオリジナルの思考をするため、よく考えて表現するようになり、音楽的な事柄も増えていきます。リトミックを通して「感触」「見る」「聴こえる」をより育んでいきましょう。

具体的には4歳になるとソルフェージュが入り、演奏されたメロディーや和音を聴き取り、楽譜に書くといった勉強が始まります。五線カードや音符などが登場するので音の高低を認識し、表現したリズムを線や文字などで表します。また、高低の伴ったリズムを左右の手で表現することで指や腕、身体のバランス感覚を育みます。

5歳

5歳は心のコントロールの安定期に入るので、複数人の友達とさまざまなことを協力できるようになり、表現方法がグレードアップします。また、友達や家族の前に立ち一人で表現するといった取り組みでは、集中力や積極性を養います。

他にも、音階を歌いながら高音の基礎を固めたり、楽譜を見ながら歌って拍子や音符を認識したりするなど。一つの事柄をこなしながら、もう一つの事柄を考えるという複数の思考を育みます。

リトミックの主なメリット

リトミックは音楽と動きを結びつけることで、心身の一致や調和を図り、集中力・反応力・観察力・想像力などを身につけられます。

ただし、その効果や変化は目に見えにくく、時間をかけて育むことでいずれ聴く力や演奏力に影響します。

下記ではリトミックのメリットを紹介するので、お子様の小さな変化に気づくヒントにしていただけると幸いです。

音感や表現力を身につけられる

リトミックは音感や表現力を身につけられます。

たとえば音楽を聴きながら動いたり、リズムをとりながら聴いたりなど。他にもタンバリンや鈴、トライアングルなどを鳴らし、拍をとることで音の変化を直観的に把握し動きに置き換えます。

また、音楽を通して自然や生活などさまざまなテーマで自己表現し、感受性豊かな表現力の向上を目指します。

このようにリトミックは、全身や楽器などを使って音感やリズム感を培えます。

集中力を鍛えられる

リトミックは集中力や聴く力を鍛えられます。

方法としては、ピアノや音楽などの伴奏が流れているときは動く、伴走が止まっているときは動きを止めるといった取り組みをします。そのとき聴いている子どもは動きを止め、聴いていない子どもは動きを止めません。

上記の取り組みは、子どもが集中して聴けるような工夫が必要ですが、繰り返し行うことで子どもたちがじっと音楽を聴き入るようになります。

協調性を育てられる

リトミックのグループレッスンでは、自己表現や子ども同士のコミュニケーションなどを通して協調性や社会性を育てられます。

たとえば、音楽を聴いて「動く」「止まる」の取り組みでは、周囲の変化を注意深く聴いたり見たりする必要があるので、敏感に応答や予感ができるようになります。

このような取り組みから、他者の気持ちに共感力が育まれるでしょう。

指導者自身もリトミック経験者であることが理想!

ここまで、子どものリトミックについてお伝えしましたが、子どもにリトミックを教えるなら、指導者自身がリトミックを経験していることが望ましいとされています。なぜならリトミックの目的を理解したうえで、子どもに教える必要があるからです。

たとえば、音楽を聴きながら身体で表現することがリトミックであることを理解しておらず、ゲーム性に重きを置きすぎると目的が変わってしまいます。また、リトミックとダンスは似た要素がありますが、見られていることを意識したダンスはリトミックとはいえないでしょう。このようにリトミックかそうでないかの判断は難しく、ときに臨機応変な対応が必要です。

上記からリトミックの目的を理解し、自身の得意な楽器や声などを使って子どもと音楽のやり取りをしましょう。また、子どもと一緒に指導者自身も楽しめることが、リトミックの魅力の一つといえます。

リトミック指導者になる方法

リトミック指導者になるために必須資格はありませんが、民間資格は多数あります。講習会や教員養成校、月例研修会などで理念・理論・実践方法などを学びます。学び方は専門学校のリトミックコースや通信講座などがあるので、ライフスタイルに合う方法を選択しましょう。

そして、リトミック指導者となった暁には保育園や幼稚園、音楽スクールや自宅での個人教室などで活躍することが可能です。

リトミックは大人も楽しめる?取り組む内容を紹介

ここまでジャック=ダルクローズのリトミックでは、高度な音楽訓練をするために「リトミックは子どもの頃から学ぶことが望ましい」といった内容をお伝えしてきました。ただし、リトミックを取り組むことで得られるさまざまなメリットを活用し、現在は大人のリトミックも広まっています。

もちろん音楽技術向上のために取り組まれている方はいますが「他者とのコミュニケーションのため」「認知機能向上のため」など、さまざまな理由で大人のリトミックが楽しまれています。具体例を挙げると病院やデイサービス、地域のイベントなど。

この章では大人のリトミックの取り組む内容を紹介するので、興味のある方はぜひ参考にしてみてください。

リズムワーク

リズムワークはリズムや音楽に合わせて、手を叩いたり歩いたりするワークです。指導者が動きを指示することがありますが、参加者が感じた動きをするケースもあります。音楽やリズムを聴いて動くことで五感を豊かにしていきましょう。

また、音楽に合わせて動きながら次のリズムや動きを考えたり、左右の手を違う速さでリズムをとったりするので、脳トレ効果も期待できます。

大人のリトミックでは、季節の歌やリクエストの歌のなどを歌います。上手に歌うことよりも呼吸に重きをおいて声を出し、楽しく歌うことが大切です。そのため、歌うことが好きな方にもリトミックはおすすめ。

また、歌うことで喉も鍛えられるので、シニア世代にも大人のリトミックが広まっています。

まとめ

本記事ではリトミックについて詳しく解説しました。

リトミックは高度な音楽訓練をするために、幼少期に聴く力を育むことが重要という考えのもと、エミール・ジャック=ダルクローズが開発しました。

そして、リトミックを取り組むことでさまざまなメリットが得られることから、世界中で普及しています。また、近年はリトミックのメリットを活用して、大人のリトミックも広まっています。

このように、リトミックは幅広く楽しまれているので、興味のある方はぜひ本記事を参考に取り組んでみてください。

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