福利厚生の新時代:Z世代が本当に求める「企業の姿」 ~相互理解から生まれる、組織の新しい「共通認識」~

「若手社員の定着率が、なかなか上がらない」
「福利厚生は充実させているはずなのに、なぜか響いている手応えがない」

人事・組織開発を担当される皆様にとって、1990年代後半以降に生まれた「Z世代」との向き合い方は、正解のない難問のように感じられることも多いのではないでしょうか。
彼らの言動に対して、「なぜそこでそう考えるのか?」と、世代間のギャップに戸惑う場面も少なくありません。

しかし、彼らが組織の構成比を増していくこれからの時代、その価値観を「理解不能」として片付けてしまうのは、企業にとって惜しいことかもしれません。
重要なのは、彼らに迎合することではなく、「彼らの特性を理解した上で、どうすれば組織の戦力として最大限のパフォーマンスを発揮してもらえるか」という視点を持つことではないでしょうか。

本記事では、Z世代の価値観を紐解きながら、採用条件や福利厚生といった「組織のインフラ」をどう設計すれば、世代を超えた強いチームが作れるのか。
経営視点と現場視点の両面から、そのヒントを探っていきます。

1. なぜ「将来の安定」が、彼らには響かないのか?
「時間軸」の違いを理解する

「長く勤めてくれれば、退職金もしっかり出るし、安泰だ」
企業側が提示するこうした「長期的なメリット」が、Z世代には決定打になりにくい傾向があるようです。これは彼らが我慢不足なのではなく、見ている「時間軸」が異なるからかもしれません。

変化の激しい時代に育った彼らにとって、「数十年先の約束」は少し遠すぎて、リアリティを持ちにくいのかもしれません。
彼らが感じているのは「老後のこと」よりも、「変化する社会の中で、明日も生き残れるスキルがあるか」という、もっと切実な「今」の市場価値であるようにも見受けられます。

だからこそ、福利厚生のあり方も、「長く居続けることへのインセンティブ」に加えて、「今の成長を加速させるための投資(学習支援やスキルアップ補助)」という要素を強めることが、彼らにとって「この会社を選び続ける『理由』」になるのかもしれません。

2. 「納得感」がなければ、アクセルは踏まない
企業のビジョンと個人の接続

「給与などの条件は良いのに、なぜか熱量を感じない」。そんなケースがある場合、彼らの中で「納得感」が不足している可能性があります。
リクルートワークス研究所の調査でも、Z世代は「企業の価値観への共感」を重視する傾向が明らかになっています。

指示の背景にある「なぜ」

「言われたからやる」というトップダウンの構造では、彼らの本来の能力は発揮されにくいようです。逆に、「なぜこの仕事が必要なのか」「社会にどう役立つのか」という背景(Why)が腹落ちした時、彼らは高い集中力を発揮する場面が多く見られます。

透明性というインフラ

経営層が何を考え、どう決定したのか。そのプロセスが見える「透明性」は、彼らにとって「この組織は自分たちを信頼してくれている」というシグナルになるようです。情報共有の風通しを良くすることは、立派な福利厚生の一つと言えるかもしれません。

3. 健康経営×SDGs
個人の活動を「組織の力」に変える設計

Z世代の特徴の一つに、「社会課題への関心の高さ」が挙げられます。
この特性を活かし、個人の健康づくりと企業のCSR(社会的責任)をリンクさせる事例が増えています。

ベクトルを合わせる工夫

例えば、ある企業では「社員が歩いた歩数に応じて、会社が環境保護団体へ寄付を行う」という仕組みを導入しました。
これは単なる慈善活動ではありません。「自分の健康管理が、会社の社会貢献につながる」という実感を持たせることで、組織への帰属意識を高める戦略的な仕掛けとしても期待できます。

「個人のやりたいこと」と「組織のやるべきこと」をどう重ね合わせるか。この設計力が、若手のエネルギーを組織に取り込むヒントになるかもしれません。

4. ワークライフインテグレーション
「自律」を促すための柔軟性


リモートワークやフレックス制度について、「楽をさせるための制度」と捉えると、導入に二の足を踏んでしまうかもしれません。 しかし、これを「個のパフォーマンスを引き出す仕組みを創造する機会」と捉え直してみてはどうでしょうか。

「管理」から「成果」へ

時間や場所を一律に管理するコストを減らし、その分を「成果」への評価に充てる。Z世代が求めている柔軟性とは、自由気ままに振る舞うことではなく、「自分に合ったスタイルで、効率よく結果を出したい」という合理性の表れとも取れます。

「働き方は任せる。その代わり成果にはこだわる」。
そうした大人の契約関係を結ぶことが、彼らの自律心を育て、結果としてマネジメントコストを下げることにつながる可能性もあります。

5. ツールへの投資は「未来への投資」
ストレスフリーな環境整備

デジタルネイティブである彼らにとって、社内ツールの使い勝手は、その企業が「変化に対応できているか」を測るバロメーターになりつつあるようです。

生産性を阻害しない

使いにくいシステムや煩雑なアナログ手続きは、彼らにとって「無駄な時間」として強いストレスになります。デジタル環境を整備することは、彼らのモチベーション維持だけでなく、組織全体の生産性向上に直結する「設備投資」と言えるのではないでしょうか。

いつでも繋がれる安心感

チャットで相談できるメンタルヘルス窓口や、スマホで完結する福利厚生。デジタルを通じたセーフティネットを用意することで、彼らは安心して業務に集中できる環境を手に入れることができます。

世代を超えて「共に走る」ために

Z世代の価値観は、従来の企業文化とは異なる部分も多く、受け入れがたいと感じる瞬間もあるかもしれません。 しかし、彼らが求めている「透明性」「効率」「成長」といった要素は、これからの時代、どの世代にとっても働きやすい環境の条件であり、それを満たすことが結果として、組織全体の「企業力」を高めることにつながるのではないでしょうか。

彼らに合わせるのではなく、彼らのエネルギーを組織の駆動力に変えるための「環境」を整える。
それは、次世代を担う人材を戦力化し、企業が持続的に成長するための、前向きな「戦略」と言えるはずです。


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