なぜ、御社の「健康施策」は組織を変えきれていないのか
「離職率が思うように下がらない」
「部署間の距離がなかなか縮まらない」
「一体感を高めたいが、決定的な施策が見つからない」
こうした組織課題に向き合う中で、「健康経営」に力を入れている企業も少なくないのではないでしょうか。しかしその取り組みが、ジムの会費補助や単発イベントにとどまっているとすれば、本来持っている可能性を十分に活かしきれていない場合もあるかもしれません。
健康経営は、従業員の健康管理という側面だけでなく、
企業カルチャーを育てるためのインターナルマーケティング施策として再定義できる余地があります。
本稿では、健康施策を「コスト」ではなく「未来への投資」として捉え直し、組織の縦割り構造にゆるやかに変化をもたらすアプローチについて考えていきます。
1. 【視点の転換】福利厚生から、共感を育てる投資へ
従業員を「最初の顧客」と捉える視点
従来の健康施策は、「会社が提供し、社員が受け取る」という構図になりやすい傾向があります。この形では満足度の向上には寄与しても、会社への愛着や主体的な関与、いわゆるエンゲージメントの醸成には十分ではない可能性があります。
インターナルマーケティングの考え方では、
従業員は自社ブランドを最も体現する“最初の顧客”と位置づけられます。
顧客がファンになる背景には、条件だけでなく「心が動く体験」が存在します。同様に、従業員にとっても、仲間と共有する前向きな体験が、組織への共感や誇りを育む契機になることが期待されます。
「個」の支援から「群」の体験へ
ジムの補助制度は個人の健康増進を支える有効な施策です。一方で、組織全体の関係性を強めるためには、チームで共有できる体験の設計が鍵になる場合があります。
職場での共通体験が増えることで、「ここで働いている意味」や「仲間とのつながり」を実感しやすくなる可能性があります。健康施策を通じて、「大切にされている」というメッセージが伝わるとき、それは単なる制度を超えた文化的な意味を持ち始めます。
2. 【課題へのアプローチ】サイロを越える、非言語コミュニケーションの可能性
言語だけでは届きにくい領域
部署間のサイロ化や心理的な距離は、多くの組織で見られる現象です。トップメッセージや情報共有の工夫は重要ですが、立場や役職の違いが無意識の壁になることもあります。
そこで注目されているのが、身体を介した非言語コミュニケーションです。
「シンクロニー効果」という知見
心理学の研究では、同じリズムで身体を動かすことが、親近感や協力行動を高める傾向があることが示唆されています。スタンフォード大学の研究(Wiltermuth & Heath, 2009)では、同期した動きを行ったグループは、そうでないグループに比べて協調行動が高まることが報告されています。
また、音楽やリズムを共有する体験が社会的結束感に影響を与える可能性も、多くの研究で言及されています。
同じ空間で、同じリズムを共有する。
それは単純な行為のようでいて、関係性に小さな変化をもたらす契機になることがあります。
デュアルタスクと認知機能
さらに、「音を聴く」「動きを見る」「身体を動かす」といった複数の刺激を同時に扱うデュアルタスク型の運動は、前頭前野の活性化や認知機能への好影響が示唆されています。2003年のイリノイ大学の研究(Colcombe & Kramer)。
LinoPodでは、運動経験や年齢を問わず参加できるインクルーシブな設計を重視しています。立って行う動きだけでなく、座位でのリズムワークも取り入れることで、誰もが無理なく参加できる環境を整えています。
こうした身体的共鳴の体験は、組織のサイロをゆるやかに和らげる一助となる可能性があります。
3. 【成果の再定義】企業カルチャーという無形資産
数値化しにくい価値
健康経営の成果は、健康指標や参加率などの数値で把握されることが一般的です。しかし、インターナルマーケティングの視点に立つと、もう一つの重要な成果が見えてきます。
関係性の質や企業カルチャーの変化です。
自然な挨拶が増える。
部署を越えた会話が生まれる。
挑戦を後押しする空気が醸成される。
こうした変化は数値化が難しい一方で、長期的には離職率や生産性、創造性に影響を与える可能性があります。
人材の再発見という副次的効果
身体を動かす場では、日常業務では見えにくい一面が垣間見えることがあります。静かな社員が場を和ませたり、若手が自然と周囲をリードしたりすることもあります。
こうした体験は、互いの理解を深める契機となり、組織の結束力を高める一因になり得ます。
身体を動かすことから始まる、静かな変化
健康経営は、守りの施策にとどまらず、組織の内側から関係性を育てる取り組みへと発展させることができるかもしれません。
福利厚生という枠を少し広げ、「インターナルマーケティング」という視点で再構築することで、健康施策は企業カルチャーを支える基盤となる可能性があります。
音楽とリズム、そして身体を動かす体験の共有は、
組織に小さな対話と共感を生み出します。
