商品開発にダンスインストラクターの視点が役立つ理由
マーケティングや商品開発の現場では、これまで以上に多くのデータが活用されています。
顧客アンケート、購買履歴、アプリの利用ログなどを分析することで、ユーザー行動を数値として把握できるようになりました。
しかし、データをもとに開発したプロダクトが、なぜか現場では「いまひとつ響かない」と感じることはないでしょうか。
アンケートでは「満足している」「問題ない」と回答されているのに、継続率や利用頻度が伸びない。
こうしたズレは、多くの企業が経験しています。
その背景の一つとして考えられるのが、ユーザー自身も言語化していない身体感覚です。
そして、この身体感覚を日常的に観察している存在の一つが、ダンスインストラクターです。
アンケートでは見えにくい「身体の違和感」
人は、自分の身体に起きている小さな違和感を必ずしも言葉にできるわけではありません。
例えば、新しいフィットネスウェアを着てレッスンを受けたとします。
アンケートでは多くの人が
「動きやすい」
「特に問題はない」
と回答するかもしれません。
しかし実際の動きを観察すると、別の様子が見えることがあります。
- 腕を上げる動きのたびに肩の布を直す
- スクワットの深さが少し浅くなる
- ターンの前にウェアの位置を調整する
こうした無意識の仕草は、ユーザー自身も気づいていない身体の小さなストレスを示している可能性があります。
人は強い不快感でない限り、こうした違和感を自分の身体側の問題として処理してしまうことがあります。
「自分の可動域の問題かもしれない」
「体の使い方が悪いのかもしれない」
「こういうものなのだろう」
と無意識に補正してしまうのです。
その結果、アンケートやインタビューといった言語ベースの調査では、こうした微細な身体ストレスが表面化しにくいことがあります。
ウェルネス商品でも起きる身体感覚のズレ
この問題は、ウェルネス商品全般にも当てはまります。
例えばプロテインドリンクの場合、味の評価はアンケートで把握できます。
しかし実際には、飲むタイミングによって身体の状態は大きく変わります。
たとえば、
- 運動直後で呼吸が整っていないとき
- 心拍数が高い状態のとき
- 朝起きたばかりの空腹のとき
では、同じドリンクでも感じ方が変わることがあります。
運動直後には
「少し重く感じる」
「飲み込みづらい」
と感じることがある一方で、朝の空腹時には「ちょうど良い」と感じる場合もあります。
つまり、プロダクトの評価は味そのものだけでなく、身体の状態との相互作用によって変わる可能性があります。
しかしユーザーは、こうした感覚を必ずしも明確に言語化できるとは限りません。
その結果、アンケートでは「味は問題ない」という評価でも、実際の利用シーンでは違和感が生まれていることがあります。
こうした身体状態とプロダクトの関係は、実際に身体を動かしている現場の方が観察しやすいことがあります。
身体の変化を観察してきた人たち
ダンスインストラクターの視点
ダンスインストラクターは日々、
- 年齢
- 体格
- 運動経験
の異なる多くの参加者を見ながらレッスンを行っています。
その中で、
- 重心の位置
- 可動域
- 動きの滑らかさ
- 呼吸のリズム
といった身体の変化を観察しながら指導しています。
例えばレッスンでは、
「今日はターンが少し不安定に見える」
「この動きは肩が詰まっているかもしれない」
「踏み込みが浅くなっている」
といった違いに気づくことがあります。
こうした気づきは、長い指導経験の中で培われてきた身体観察のスキルと言えるでしょう。
ダンスの現場で身体感覚が見えやすくなる理由
ダンスでは、
- 腕を大きく振る
- 体をひねる
- 重心を素早く移動させる
といった動きが繰り返されます。
そのため、ウェアやデバイスのわずかな違和感でも、動きの質やフォームの変化として表れやすくなります。
さらにインストラクターは、こうした動きを日常的に観察しています。
多くの身体を見てきた経験から、動きのわずかな違いにも目が向きやすい環境にあります。
ダンススタジオは、身体の変化が現れやすく、それを観察できる人がいる場とも言えるかもしれません。
商品開発に活かせるインストラクターの視点
ダンスインストラクターの視点からは、ユーザー自身が気づいていない身体の違和感が見えてくることがあります。
例えば、
「このウェアだと腕の動きが少し小さくなるように見える」
「このシューズは着地の衝撃が少し硬いかもしれない」
「このドリンクを飲んだ日は後半の動きが重そうに見える」
といった気づきです。
こうした視点は、ユーザーアンケートだけでは得られない示唆を与えてくれる可能性があります。
インストラクターの観察や意見をリサーチに取り入れることで、ユーザーが言語化していない身体感覚に気づくきっかけになるかもしれません。
商品開発のヒントは「動いている身体」にある
データ分析は、ユーザー行動を理解するうえで欠かせません。
一方で、身体感覚の領域ではデータだけでは見えにくい部分もあります。
もし商品やサービスの改善に行き詰まりを感じているなら、
一度「動いている身体」に目を向けてみるのも一つの方法かもしれません。
ダンスの現場では、身体の変化や違和感が動きとして現れやすくなります。
そしてインストラクターは、そうした変化を日常的に観察しています。
ユーザーが言葉にできない身体感覚を理解するために、
インストラクターの視点から話を聞いてみることは、商品開発に新しいヒントをもたらす可能性があります。
